はじめに
Claudeで書いた文章に透かしが入るようになったと聞いて、こんなことが気になっていませんか。
- 文章に何かが埋め込まれているなら、ブログや提案書に使って大丈夫なのか
- 自分の書いた文章がClaudeで書いたものだと、誰かに見分けられるのか
- 「Claude 透かし 消し方」で出てくるツールを通しておくべきか
気になる理由の多くは、透かしを文章に足された見えない文字だと思っていることです。Anthropicが公式の発表で説明している透かしは、文字を足すものではありません。Claudeが単語を選ぶときの選び方に、統計的な偏りを持たせるものです。
Claudeの透かしの仕組み
文章を書くとき、Claudeは次に来る単語の候補をいくつも持っていて、その中から1つを選びます。意味がほとんど同じ候補が並ぶ場面では、どれを選んでも文章の質は変わりません。透かしを入れたClaudeは、この選択を、Anthropicだけが持つ秘密の鍵と直前の単語の並びをもとに決めます。
1か所の選択では何もわかりませんが、長い文章では選ばれた単語の偏りが積み重なり、鍵を持つ側が計算すると印として読み取れます。発表によると、方式はGoogle DeepMindが公開したSynthID-Textの一種です。
発表には、文章には何も足されず、隠れた文字もない、と書かれています。使っている人や会社を見分ける情報も入りません。
対象と時期
Claudeのヘルプによると、透かしの対象は次のとおりです。発表では、EUのAI規制への対応として始めたうえで、EUに限らず全世界で適用するとしています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 始まり | 2026年8月2日以降にEUで公開されたモデルは、公開した時点から |
| それ以前のモデル | 数か月かけて順に対応 |
| 対象のサービス | Claudeのアプリ、API(Claude Platform)、Claude Code、Claude Cowork、Claude Tag |
| クラウド経由 | AWS(Bedrock)、Google Cloud、Microsoft Foundryで使うClaudeも対象 |
| 個人や会社の情報 | 入らない |
ヘルプには例外も書かれています。Sonnet 4.6とOpus 4.6では、temperatureなどの生成の設定を初期値から変えると、透かしが確実には入らないことがあります。
画像などのファイルには、文章とは別の仕組みが使われます。Claudeが作ったファイルには、C2PA(作られた経緯をファイルに記録する業界の規格)の署名付きの情報が付きます。ファイルの中身は変わりません。
透かしでわかること、わからないこと
| 問い | 透かしで答えられるか |
|---|---|
| この文章の作成にClaudeが関わった可能性があるか | 答えられる(十分な長さがある場合) |
| 誰が、どの会社が書かせたか | 答えられない(個人の情報は入らない) |
| Claudeが全部書いたのか、人が書いた文章をClaudeが直したのか | 答えられない |
| 人が書いた文章であること | 答えられない(透かしがないことは証明にならない) |
| ChatGPTやGeminiが書いたか | 答えられない(鍵が違う) |
ヘルプでは、透かしが見つかった場合にわかるのは、Claudeで処理された可能性があることまで、とされています。
残りやすさについて、発表には次のように書かれています。軽く直した程度では透かしは消えきらず、Claudeに翻訳させた文章にも透かしが入ります。一方で、短い文章では検出がうまくいかず、事実を並べただけの文章やコードでは透かしが弱くなります。言い換えの余地が少ない文章では、単語の選び方に偏りを持たせにくいためです。
透かしの確認方法
文章の透かしを一般の人が確かめる方法は、2026年11月6日の時点ではありません。Anthropicは検出のAPIを限定公開していますが、対象はEUの法律で認められた組織(規制当局、報道機関、ファクトチェックの団体、研究者など)です。発表では、今後は使える範囲を広げるとしています。
ファイルのほうは、AnthropicのClaude Content Checkerにファイルを渡すと、C2PAの情報が付いているかを無料で確かめられます。ただし、このツールは文章を確認しません。ファイルの形式を変えたり、スクリーンショットを撮り直したりすると、C2PAの情報は消えます。
ウェブで見かけるAIの文章を判定するサービスは、Claudeの透かしを読んでいません。鍵がなければ透かしは検出できないので、そうしたサービスの結果は文体などからの推定です。
透かしを消すツールの中身
「Claude watermark remover」で検索すると、GitHubで公開されている除去ツールがいくつも見つかります。READMEを読むと、多くは文章の中の目に見えない文字を消すものです。
- ゼロ幅スペースなど、幅のない文字
- 文字の向きを指定する制御文字
- タグ文字(画面に出ない、旗の絵文字などで使う文字)
- 異体字セレクタ(直前の文字の字形を指定する文字)
Anthropicは、透かしは隠れた文字ではないと説明しています。目に見えない文字を消しても、単語の選び方に入った偏りは残ります。いくつかのツールのREADMEにも、文字を消すだけでは統計的な透かしは消えない、または消えたと保証できる道具はない、と書かれています。
目に見えない文字の話が広まったきっかけの1つは、2025年4月の出来事です。Rumiの報告で、OpenAIのo3とo4-miniの長い回答に、狭い幅の空白(U+202F)が入っていることがわかりました。OpenAIは透かしではないと説明し、その後この文字は見られなくなったと追記されています。Claudeの出力に同じような文字が入っていたという一次資料は見つかりませんでした。
日本語の文章で起きること
目に見えない文字を機械的に消すツールは、日本語の文章を壊すことがあります。異体字セレクタは、漢字の字形を指定するためにも使われているためです。
Unicodeの異体字の登録データでは、「葛」に10通り以上の字形が登録されています。人名や地名で特定の字形を指定している文章からセレクタを消すと、指定のない「葛」に戻ります。絵文字の後ろのセレクタを消すと、カラーの絵文字が白黒の記号で表示される環境もあります。
透かしは消えないうえに、こうした文字は消えます。Claudeで書いた文章を、除去ツールに通す理由はありません。
ほかのAIの透かし
| 会社 | 文章の透かし |
|---|---|
| Anthropic | 全世界で適用。検出APIはEUの対象組織に限定公開 |
| OpenAI | 2026年10月5日にtextGrainを発表。ChatGPTとCodexの、EUでの出力だけ。APIは初期設定で無効(TechCrunch) |
| 同じ方式のSynthID-Textを2024年に論文で公開 |
TechCrunchによると、OpenAIは自社の試験の結果も公表しています。単語の約10%を同義語に置き換えると、検出できる割合が約92%から66%に下がったとのことです。どの会社の透かしも、言い換えると弱まる性質は同じです。
Claudeで書いた文章の扱い
Claudeで書いた文章をブログや社内の資料に使うことは、透かしが入っていても変わりません。透かしに使った人の情報は入らず、一般の人が文章から透かしを確かめる方法もまだありません。
気にするべきなのは、透かしより、提出先や掲載先のルールです。AIの利用を書くように求められている場面では、透かしの有無にかかわらず、そのとおりに書きます。見えない文字を消すツールは、透かしを消さずに日本語の字形だけを壊すので、使わないほうが安全です。
まとめ
- Claudeの透かしは単語の選び方に入る統計的な印で、文字は足されない
- 2026年8月2日以降のモデルから、アプリ、API、Claude Codeなどで全世界に適用されている
- わかるのはClaudeが関わった可能性までで、誰が書いたかや、人が書いたことはわからない
- 文章の透かしを一般の人が確かめる方法はまだない。ファイルのC2PAはClaude Content Checkerで確かめられる
- 目に見えない文字を消すツールでは透かしは消えず、日本語の異体字や絵文字の表示が崩れることがある

